【読了】ポピュラー音楽の基礎理論

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図書館でなんとなーく借りてきた、Peter van der Marwe(ピーター・ファン=デル=マーヴェ)著の「ポピュラー音楽の基礎理論」が面白い!

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amazon.co.jpでは新品の取り扱いはないみたいだけど、http://www.amazon.co.uk/では原書のペーパーバック版が買えるみたい。
(原書はオックスフォード大学出版局が出しているらしい)

著者については、訳者あとがきで

こんな本を書いてしまったピーター・ファン=デル=マーヴェって、いったいどんな人物なのか。残念ながらそれがよくわからない。
と、身も蓋もない書かれようをしている上に(笑)wikipediaで検索してもたいした事がかいてなく、本当にどういう人なのかさっぱり。

http://en.wikipedia.org/wiki/Peter_van_der_Merwe

確実に言えるのは、この人はものすごく音楽が好きなんだろーなー、ということ。

例えば「12小節ブルース」の説明をしている時に、なんで12小節なのか、のルーツとして考えられる要素を、ブルースが最初に始まったと考えられている当時の時代背景をベースにあーでもない、こーでもないと譜例を交えて解説していく。
その過程で

20世紀の初めまでに、12小節、三部分形式が黒人だけでなく白人のフォークミュージシャンにも好まれていたことは明らかだ

てな感じで白人のフォークが出て来ると、一旦ブルースから脱線して、そのフォークについての考察がこれまた譜例や歌詞の引用を交えながら延々と続き・・・ というパターンの繰り返し。

なんか「その話、長いよ」でおなじみのへべれけおじさん(誰とは敢えて言わないw)の語りを聞いているかのよう。人が本当に好きで、情熱を傾けていることについての話を語ってるのは、内容が面白い面白くないに関わらず、その行為や状態だけで充分面白いし、なにより楽しい。
膨大な量の楽譜が付いているので、本来はその音を実際に奏でながら読み進めて、あー、なるほどねと納得するのが正しい嗜み方だったのかもしれないけど、さすがにそれをやるには返却期限を2年くらいにしてもらう必要があるね。

ちょっと気になるのはタイトルの和訳が内容とマッチしていないこと、かなぁ。ポピュラー音楽、となっているけど、ビートルズが言及されているのは2回しかない。(バンドとしてのthe beatlesが1回、楽曲「ジョンとヨーコのバラード」が1回)つまり、それ以前の音楽の歴史までしか言及がないし、南アフリカ人が書いたものなので、ポピュラー音楽というものの捉え方がやや違うかな、という気もする。
所謂「ポップ」の歴史は全てthe beatlesが作ったと言っていいと(僕は)思っているので、これはちょっと残念。
van der Merweって多分オランダ系の名字だけど、同じオランダ人のvan Halenなんかは当然圏外。ブルースについてはかなり語っているけど、あんまりロックには興味がないのか、ロックミュージシャンについての記述はRolling Stonesが一回出てきた程度。

さらに言うと、「基礎理論」ではない。難し過ぎるくらい専門用語のオンパレードだし、紙面の大半はポピュラー音楽の理論が産まれた歴史を説明しているので、原題のoriginを「起源」としてタイトルにした方がしっくりきたような気もする。もしそうだとしたらこの本を読まなかったかもしれないから、それはそれで良かったのかもしれないけど。